公表されているプロトコールの再現
しばしば、既に発表されているプロトコールの遠心条件を再現する必要が生じます。再現を検討する際には、ロータ名または最大回転半径、RPMまたはRCF、運転時間など、遠心分離に必要な情報が提供されていることをご確認ください。
遠心力の計算
既発表のプロトコールを再現する際には、ロータ名または最大回転半径、RPMまたはRCF、運転時間など、遠心分離に必要な情報が提供されていることが重要です。例えば、ロータが規定されていなかったり、ロータの最大回転半径(rmax)が示されていなかったりすると、遠心分離に必要なRCFを知ることができません。Rmaxが226 mmであるJS-5.2ロータからは4,050xgの遠心力が生じます。この500xgの差は小さくみえますが、これを無視すると結果に影響が及ぶ場合があるほど、十分に大きな差です。例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)キットに規定される血液成分の調製またはペレット作製のステップは、遠心条件に十分に注意を払う必要のある一例です。
多くのアダプタは、底部が10~15 mmほどの厚さの小型チューブを多数保持するよう設計されています。大抵の遠心分離は、この有効rmaxのわずかな減少の影響を受けませんが、より正確なRCFの計算が必要な場合は、ロータのrmaxからアダプタ底部の厚さを差し引いて、そのロータとアダプタの組み合わせにおける有効rmaxを算出しなければなりません。

これは、あるロータで実施された遠心分離は、rmaxが異なる別のロータでは再現できないわけではありません。rmaxの差に対してロータの回転数(または運転時間)を補正することで、同じ結果を得ることができます。回転数の選択には、以下のノモグラムをご利用ください。これらの指示に従うことにより、様々なrmaxのロータについてRCFやRPMを推定できます。

また、以下のRCF式を用いれば、適切な回転数を計算することもできます。例えば、rmaxが250 mmでRCFが3,430 xgとなるロータを使用した手順を行いたいとします。これらの条件をベックマン・コールターのJS-5.2ロータ(rmaxは226 mm)で再現する場合、回転数(rpm)を算出するために式の項を入れ換える必要があります。すると、RCF = 1.12r(RPM/1,000)2となります。
このように、JS-5.2ロータを約3,681 rpmで運転すると、RCFは3,400 xgという計算になります。RCFではなく回転数およびロータの半径が規定されている場合、まず上記の回転数選択ノモグラムのチャート、または、この式からRCFを計算しなければなりません。
場合により、遠心力を変更するよりも、遠心時間を変更する方がよい場合もあります。3,000 xgで10分間の遠心分離が必要な手順を再現したいとします。最大RCFが2,300 xgであるJR-3.2ロータは使用できるでしょうか? 運転時間をかなり長く設定すればそれは可能です。必要とされる遠心時間は、以下の式で計算できます。
ここで
t1 = JR-3.2ロータに必要な運転時間
t2 =規定された運転時間
RCF1 = JR-3.2ロータの最大回転数におけるRCF
RCF2 = RCF 規定されたRCF
このため、この例では、
遠心時間は通常、その遠心機の時間設定でも同じ時間にします。この時間設定にはロータが加速する時間と目標回転数で運転している時間が含まれますが、減速している時間は含まれません。この減速時間は、サンプルを含むロータの重量、ブレーキシステムの種類、オペレータが選択するブレーキの設定に左右されます。最大ブレーキ設定を使用した場合、最大量のサンプルを搭載したロータの停止には1~3分間かかります。
もちろん、減速中もサンプル中の粒子の沈降は続きますが、ロータの回転数が下がるにつれて沈降は低下します。最大ブレーキ設定を用いれば減速時間を最小限にできます。しかし、直径の大きなボトルや血液バッグを使用する場合、ロータ減速の最終段階での最大ブレーキは減速が急激すぎる可能性があり、結果として、沈降した物質の攪拌や再懸濁が生じることがあります。再懸濁された物質が認められると、分離失敗と誤解しやすくなります。
注意:遠心条件を変更する前に、サンプルがより厳しいペレット形成条件やより長い遠心時間によって有害な影響を受けないかどうか、よく確認してください。通常、小さな変更では問題は発生しません。しかし、一部の生体サンプルは、特に冷却していない場合に、遠心時間が長すぎると劣化する可能性があります。さらに、キット形式で販売されているアッセイには、遠心時間の影響を受けやすいものもありますので、できる限り指示に従うようにしてください。