多波長AUC特性解析と治療用リポソームの品質管理
例:Doxoves(リポソームドキシルビシンの市販製剤)
用量最適化における課題:
- 空のリポソームと薬物内包リポソームとの識別
- 製剤中の遊離薬物分子の同定
AUCによる品質管理解析
密度の特性解析がカギ
薬物内包リポソームと空のリポソームは半径が同じため、サイズ分離法(光散乱/ゼータ電位)だけでは分離できません。一方、これらは質量が異なります。
分析用超遠心システム(Analytical Ultracentrifugation:AUC)は、密度に基づいてリポソームを特性解析する、ネイティブ状態での解析手法です。サンプルリポソームを紫外可視吸収により検出し、遠心下での沈降の様子を追跡します。
リポソームと遊離薬物の追跡
Optima AUCは、280 nmでリポソーム二重層からのシグナル、490 nmで薬物の発色団からのシグナルを検出します。すなわち、空のリポソームと薬物内包リポソームは、いずれも280 nmで吸収を示します。遊離薬物とリポソームに封入された薬物は490 nmで吸収を示します。このように、多波長吸収AUCは、ベシクルと薬物の発色団を同時に追跡できます。
多波長AUCデータからの薬物内包効率
薬物内包効率は、次のように測定します。
- 空のリポソーム(約100S、緑線)に対する薬物内包リポソーム(約225S、黒線)の割合、ここでは約87.6%が内包
- 遊離薬物を含む全薬物に対するリポソームに封入された薬物(約225S、紫線)の割合、ここでは約88.8%が封入
この実験では、ドキソルビシンはすべてリポソームに封入されており、キャリアであるリポソームに含まれた状態で、約225Sで沈降します。
まとめ
Optima AUCのデータから、空のリポソームと薬物内包リポソームを、ベースライン分離により定量的に識別できます。さらに、溶液に含まれる非封入(遊離)薬物の存在を検出することも可能です。これは、正確な投与と患者の安全を確保する上で重要です。
本製品は研究用です。診断には使用できません。



